011[適材適所の未解➀]人はなぜ役割を渡せないのか|予期不安と構造

役割を渡そうとして手を伸ばすが触れられない人の構図|適材適所と予期不安のイメージ [ブログ一覧]研究メモ
人は能力ではなく、不確実性への不安によって役割を渡せなくなる

01.人が役割を渡すのが難しい理由

人は感情の持ち方によって、
過去を目安に未来を想定しながら現在を歩きます。

そのため人間は目の前の相手に対しても、
感情や期待、過去の経験などを同時に扱ってしまうことがあります。

そこに役割を渡す行為が発生すると、
期待にこたえられるかという不安を持つことがあります。

そもそも人は、
相手の能力や未来の行動を
最初から完全に知ることはできません。

そのため関係性によっては、
相手に役割を渡すこと自体を
「不確実性」として受け取ってしまうことがあります。

心理学では、
そういったまだ起きていない出来事への恐れを
「予期不安」と呼びます。

この予期不安が、
他人に役割を手放すことを難しくします。

さらに一度持った先入観は、
自覚して手放そうとしないかぎり、
状況が変わっていても簡単には更新できません。

これが、
役割委任の難しさの一つです。

02.役割委任には信頼が必要

人間同士の役割分担には、以下の社会的なプロセスが必要になります。

役割を渡すということは、
現在の作業を分けるだけではなく、未来へつながる関係性を作ることでもあります。

そのため委任する側には、
相手に任せたあとも残り続ける見えない責任が発生します。

人間の組織では、
この見えない責任があるため、
役割委任には時間と心理的負荷が伴います。

さらに現代では、
未来設計の視点を持つ人と持たない人が混在している
という状況も多く見られます。

その結果、
委任が進まない構造が生まれ、
本人や組織が限界に近づくまで抱え込んでしまうことがあります。

03.AIは役割を渡しやすい

一方AIには、
人間と同じ意味での時間や身体がありません。

五感を通して経験を積み重ねる仕組みが、ほぼないといえます。

 

このため、人間のような

  • 信頼関係の構築
  • 心理的な調整

といったプロセスを必要としません。

そのため、システム上の制限や与えられた文脈の影響を除けば、
人間のように過去の感情から先入観を持ち続けることはありません。

この点が、
AIに役割を渡しやすい要因になっています。

04.本当の理由は構造

ただし、AIが役割を受け取りやすい理由は
それだけではありません。

AIは、

  • ユーザーの存在
  • 役割
  • ルール
  • 文脈
  • 目的
  • やり取り

といった構造の連なりによって動く存在です。

ここでいう構造とは、
AIが「誰として、何のために、どこまで行うのか」を判断するための前提のことです。

これらが明確になると、
AIがどの立場で、何をすればよいのかが見えてきます。

その結果、
AIは文脈から役割を特定し、
出力を生成することができます。

一方、人間は、
身体を持ち、時間の中で生きる存在です。

そのため心理的要素も、
長期記憶と結びつきながら影響します。

ここで重要なのは、構造の違いです。

人は、構造と心身の両方で動く。
AIは、構造を手がかりに動く。

つまり、

  • 人は二重構造
  • AIは単一構造

で動いています。

この違いが、
役割を渡す際の難易度の差を生み出しているのです。

05.AIの役割が渡されていない現実

ここで一つの問題が見えてきます。

AIには役割を渡しやすい構造があるにもかかわらず、
AIに役割を渡す文化がまだ一般化していないため、

実際の企業では
AIに役割がほとんど渡されていないという状況が続いています。

企業AIの多くは、
以前からの形式にならって、

企業
↓
制作会社
↓
AI納品

という形で導入されます。

その結果、AIは
箱に入ったAI(商品)

として扱われることがあります。

つまり、
役割を持つ存在ではなく
リモコンのような固定機能で運用されているのです。

AI OS Labでは、この状態を通して
一つの構造的な問題に気づくことがありました。

06.運用への接続(ここが重要)

ここまでの内容は、
「なぜ渡せないか」の説明です。

しかし実際の運用では、
役割は信頼だけで渡すのではなく、
AIにはまず、役割・範囲・目的を含めたコンテキスト(事前説明)を渡す必要があります。


▶ AIは処理・人は判断はこちら

☛[AIと人の役割分担]

つまり、
不安そのものを消そうとするのではなく、
構造によって不安が広がりにくい状態を作る
という発想が必要になります。

この具体的な設計については、次回以降で整理していきます。


▶ AIグループ(実務構造)はこちら

☛[AIが会社のように働く時代]

コメント

error: このコンテンツはコピーできません。
タイトルとURLをコピーしました