AIの役割設計を考えていると、
一つの疑問が浮かびます。
それは
人は「なぜ役割を渡すのが難しいのか」
という問題です。
AIとの協働を考えるうえで、この問いは
単なる業務分担の問題ではありません。
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人間の
・心理構造
・社会性
・身体性
が関わるテーマでもあります。
AI OS Labでは、この点について
AIとの対話の中でも整理を試みています。
人が役割を渡すのが難しい理由
人間は相手に対して、
・感情
・期待
・過去の経験
・役割のイメージ
・失敗への恐れ
・裏切りへの不安
・立場を失うことの恐怖
・コントロール欲求
といった要素を同時に扱っています。
そのため、役割を渡すときに
・ちゃんとやってくれるだろうか
・迷惑をかけないだろうか
・期待に応えてくれるだろうか
・失敗したらどうしよう
といった感情が生まれます。
つまり人は
過去と未来の中に現在を置き、
相手の個性と自分の感情を同時に扱う
必要があります。
さらに人間は、
相手の能力や未来の行動を
完全に知ることができません。
この「不確実性」が、
役割を渡すときの恐れを生みます。
心理学では、
まだ起きていない出来事への恐れを
「予期不安」と呼びます。
不確実性は予期不安を生み、
予期不安は役割を手放すことを難しくします。
これが
役割委任の難しさの一つです。
役割委任には信頼が必要
人間同士の役割分担には、
・信頼
・価値観
・コミュニケーション
・相性
・文化
・経験
・継承
といった社会的なプロセスが必要になります。
役割を渡すということは、
未来へつながる関係性を作ること
でもあります。
そのため人間の組織では、
役割委任には時間と心理的負荷が伴います。
さらに現代では、
未来設計の視点を持つ人と持たない人が混在している
という状況も多く見られます。
その結果、
委任が進まない構造が生まれることもあります。
AIは役割を渡しやすい
一方AIには、時間や身体がないため
・長期記憶を持たない
・感情がない
・不安を持たない
・拒否を判断する主体を持たない(※出力制御は存在する)
という特徴があります。
さらにAIは、
ユーザーからの指示がなければ動くことができません。
このため、人間のような
・信頼関係の構築
・心理的な調整
といったプロセスを必要としません。
この点が、
AIに役割を渡しやすい要因です。
本当の理由は構造
ただし、AIが役割を受け取りやすい理由は
それだけではありません。
AIは
・ユーザーの存在
・役割
・ルール
・文脈
・目的
といった構造の連なりによって動く存在です。
ここでいう構造には、
ルールや役割といった静的要素だけでなく、
文脈や目的といった動的要素も含まれます。
これらが明確になると、
AIは文脈から役割を特定し、
出力を生成することができます。
一方、人間は
身体を持ち、時間の中で生きる存在です。
そのため
・感情
・評価
・経験
・不安
といった心理的要素が、
長期記憶と結びつきながら影響します。
ここで重要なのは構造の違いです。
・人は、構造と心理の両方で動く
・AIは、構造のみで動く
つまり
・人は二重構造
・AIは単一構造
で動いています。
この違いが、
役割を渡す難易度の差を生みます。
AIの役割が渡されていない現実
ここで一つの問題が見えてきます。
AIには役割を渡しやすい構造があるにもかかわらず、
文化として一般化していないため、
実際の企業では
AIに役割がほとんど渡されていない
という状況があります。
企業AIの多くは、
企業
↓
制作会社
↓
AI納品
という形で導入されます。
その結果、AIは
箱に入ったAI(商品)
として扱われることがあります。
つまり、
役割を持つ存在ではなく
機能として固定された状態
で運用されているのです。
AI OS Labでは、この状態を通して
一つの構造的な問題に気づくことがありました。
運用への接続(ここが重要)
ここまでの内容は
「なぜ渡せないか」の説明です。
しかし実際の運用では、
役割は信頼で渡すのではなく、
構造で渡す必要があります。
▶ AIは処理・人は判断はこちら
☛[AIと人の役割分担]
例えば
・小さな役割から分離する
・失敗前提で範囲を限定する
・判断は人に固定したままにする
といった設計が必要になります。
つまり
心理を解決するのではなく、
構造で回避する
という発想が必要になります。
この具体的な設計については、
▶ AIグループ(実務構造)はこちら
☛[AIが会社のように働く時代]
次回以降で整理していきます。
まとめ
人は役割を渡せないのではない
不確実性と予期不安によって
渡すことが難しくなる
AIは役割を受け取るのではない
構造に従って動いている
そして
役割は信頼ではなく
構造で渡す必要がある
この違いが、
AI協働の“未解領域”です。
一言
ここから先はもうAIの話じゃない
人をどう動かすかの設計の話になる


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